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FortiClient VPNサーバのログ記録問題とは?

FortiClient VPNサーバにおいて、認証成功ログが適切に記録されないという重大な問題が発見されました。この問題により、VPNのセキュリティが著しく脆弱になり、外部からの攻撃に対して管理者が十分に対応できないリスクが生じています。

具体的には、FortiClient VPNサーバは「認証」と「承認」の二段階でユーザーの接続を管理していますが、承認に成功した場合のみログイン成功が記録され、認証が成功しただけの段階では記録されません。このため、ユーザーの認証情報が不正に利用されても、その痕跡が残らないという重大な問題を引き起こしています。

通常、VPNの認証プロセスでは、まずユーザーのIDとパスワードなどの認証情報が確認され、その後、アクセス許可が与えられる承認プロセスに進みます。しかし、FortiClient VPNサーバでは認証成功のみではログが残らず、承認まで到達しない限り、ログイン成功の記録が行われない仕様となっています。この仕様により、セキュリティ上の盲点が生まれており、不正アクセスが行われても管理者がその痕跡を把握するのが困難です。

例えば、攻撃者がブルートフォース攻撃などを使用して認証情報の窃取を試みた場合、認証に成功しても承認されない限り、その成功はログに記録されません。そのため、セキュリティ担当者は攻撃の試行が成功したかどうかを判断する手段が限定され、攻撃の兆候を見逃してしまうリスクが高まります。

さらに、この問題は、攻撃者が認証情報を窃取した後に、それを利用して不正にシステムにアクセスする可能性を高めます。ログに認証成功の記録が残らないことで、管理者はどの認証情報が不正に利用されたのかを把握することができず、被害者にパスワード変更を要求するなどの対応が遅れる恐れがあります。この結果、窃取された認証情報がダークウェブなどで売買され、さらなるサイバー攻撃に悪用されるリスクもあります。

この問題はPenteraの研究者によって発見され、Fortinetに報告されましたが、Fortinetはこれを脆弱性として正式に認めていません。そのため、「責任ある開示」に基づく脆弱性の修正は行われておらず、現在も多くのユーザーがこのリスクにさらされている状況です。さらに、問題を示す概念実証(PoC)コードがGitHubで公開されているため、攻撃者がこの情報を利用してさらに攻撃を仕掛ける可能性が懸念されています。

FortiClient VPNサーバを運用する管理者には、多要素認証(MFA)の導入や、ログの厳格な監視といった追加のセキュリティ対策が強く推奨されています。本件の手法で認証情報が窃取された場合、数分以内に「SSL tunnel shutdown」がログに記録されるため、接続成功時に記録される「SSL tunnel established」が存在しない単独の「SSL tunnel shutdown」の発生には特に注意を払う必要があります。

問題の背景と研究者による発見の経緯

この問題は、Penteraの研究者によって2024年11月に発見されました。研究者たちはFortiClient VPNのセキュリティ性能を評価する目的で調査を行っている際に、このログ記録に関する不具合に気付きました。彼らは、FortiClient VPNサーバの通信プロトコルを解析し、認証プロセスと承認プロセスのログ記録の仕組みに不備があることを突き止めました。

FortiClient VPNサーバは、通常、HTTPSプロトコルを使用してユーザーの認証を行います。研究者たちはこのプロトコルの挙動を解析する過程で、認証成功時には「ret=1」という文字列が返されることを確認しましたが、この認証成功の情報がログに記録されないことにより、承認プロセスまで進行しない場合、認証成功の事実が残らないことを発見しました。

この問題により、攻撃者が認証を突破した場合でも、その痕跡がサーバに記録されないという極めて深刻なセキュリティリスクが生まれています。さらに、研究者はこの欠陥が悪用されることで、ブルートフォース攻撃や辞書攻撃による認証情報の窃取が実行されても、管理者はその攻撃を感知できない可能性が高まると警告しています。

研究者たちは、この問題をFortinetに報告しましたが、Fortinetはこの挙動を脆弱性とは認めず、正式な脆弱性修正の対象外としました。そのため、研究者は「責任ある開示」のプロセスを経て問題の詳細を公表することにし、PoC(概念実証)コードも公開しました。このコードはGitHub上に掲載されており、悪意のある攻撃者がこれを参考にしてさらなる攻撃を行うリスクが懸念されています。

研究者たちは、FortiClient VPNを利用する管理者に対して、強固なログ監視体制の確立と多要素認証(MFA)の導入を推奨しています。これは、認証情報の窃取が行われた場合でも、その痕跡を追跡し、被害を最小限に抑えるための重要な対策です。特に、認証成功後に「SSL tunnel shutdown」のみがログに残される場合、これは攻撃の成功を示唆する重要な兆候であり、管理者はこのサインに注視する必要があります。

この問題がもたらすリスクと影響

FortiClient VPNサーバのログ記録不備により生じるリスクは、企業のセキュリティ全体に大きな影響を与える可能性があります。この問題により、次のような具体的なリスクが生じます。

  1. 不正アクセスの検知困難

    認証成功のログが記録されないため、攻撃者がブルートフォース攻撃や辞書攻撃で認証情報を突破しても、その痕跡がサーバに残りません。その結果、管理者は不正アクセスの試行を検知することができず、攻撃に対する適切な対応が遅れてしまう可能性があります。これにより、攻撃者はセキュリティシステムに検知されずにシステム内に侵入し、不正な活動を続けるリスクが高まります。
  2. 認証情報の悪用と二次被害の拡大

    攻撃者が認証情報を窃取し、その情報を利用してシステムにアクセスする場合、管理者がその事実を把握できないため、速やかな対策が困難になります。例えば、被害者にパスワードの変更を促すことが遅れ、窃取された認証情報がダークウェブなどで売買される可能性があります。これにより、さらなるサイバー攻撃の被害が拡大し、企業の機密情報が流出するリスクが増大します。
  3. 企業ブランドの信用失墜

    セキュリティ侵害が発生し、顧客や取引先に対して機密情報の漏洩が明らかになると、企業のブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります。特に、VPNは安全なリモートアクセス手段として広く利用されていますが、このような脆弱性が発見されると、顧客はVPNの利用に対して不信感を抱き、他のサービスへの乗り換えを検討する可能性があります。
  4. 規制遵守の問題

    多くの国や地域では、企業に対してセキュリティ管理に関する厳格な規制が設けられています。例えば、GDPRなどの個人情報保護規制では、不正アクセスの防止と認証情報の適切な管理が求められています。このようなログ記録の不備が原因でセキュリティ侵害が発生した場合、企業は規制違反として罰則を受ける可能性があり、法的なリスクも増大します。
  5. 内部のセキュリティチームへの負担増加

    不正アクセスが発生した場合、ログ記録が適切に行われていないことで、セキュリティチームが攻撃の痕跡を追跡することが極めて難しくなります。これにより、内部のセキュリティチームの負担が増大し、他のセキュリティ脅威への対応が遅れる可能性があります。結果として、企業全体のセキュリティ体制が弱体化し、新たな脅威に対して脆弱な状態になるリスクが考えられます。

このように、FortiClient VPNサーバのログ記録問題は、企業のセキュリティに対して多岐にわたる深刻なリスクをもたらします。これらのリスクを適切に管理し、未然に防ぐためには、より強力なセキュリティソリューションの導入が求められています。

Fortinetの対応と管理者に求められる対策

Fortinetは、この問題を脆弱性とは認めず、正式な修正パッチを提供していません。そのため、FortiClient VPNサーバを使用する企業の管理者は、自らの判断でセキュリティ対策を強化する必要があります。以下は、管理者が取るべき具体的な対策です。

  1. 多要素認証(MFA)の導入

    管理者は、認証情報の安全性を高めるために多要素認証(MFA)の導入を強く推奨します。MFAを使用することで、仮に攻撃者が認証情報を窃取したとしても、追加の認証ステップがあることで攻撃を防ぐことができます。特に、スマートフォンによる認証やハードウェアトークンなど、強固なMFAソリューションを採用することで、セキュリティを大幅に強化できます。
  2. ログ監視と分析の強化

    ログの記録不備を補うため、管理者は独自にログ監視と分析を強化する必要があります。外部ツールを活用してVPN接続のログを監視し、不審な挙動を早期に検出することが重要です。また、ログ監視システム(SIEM)の導入により、リアルタイムでの異常検知とアラート通知を行い、迅速な対応が可能となります。
  3. 侵入検知および防止システム(IDS/IPS)の導入

    侵入検知システム(IDS)および侵入防止システム(IPS)を導入することで、外部からの攻撃をリアルタイムで検出し、防止することができます。これにより、FortiClient VPNのような脆弱性を突いた攻撃にも対応可能となり、攻撃者がシステムに侵入する前に対策を講じることができます。
  4. アクセス制御と権限管理の見直し

    VPNアクセスを許可するユーザーやデバイスの制御を厳格に行うことで、攻撃者が不正にアクセスするリスクを減らすことができます。管理者は、各ユーザーに必要最低限のアクセス権を付与する「最小権限の原則」を適用し、不要な権限を持たないように管理することが重要です。また、特定の場所や時間帯のみアクセスを許可するなど、柔軟なアクセス制御を導入することで、セキュリティを強化できます。
  5. セキュリティ教育と意識向上の推進

    従業員に対してセキュリティ教育を実施し、フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリング攻撃に対する対策を学ばせることも重要です。認証情報の管理方法や強力なパスワードの使用、疑わしいリンクをクリックしないなど、基本的なセキュリティ意識を高めることで、組織全体のセキュリティレベルを向上させることができます。
  6. セキュリティパッチの適用と定期的なシステムチェック

    Fortinetが正式な修正パッチを提供していない状況ではありますが、管理者はその他のセキュリティパッチやアップデートを確実に適用し、システムを最新の状態に保つ必要があります。また、定期的にシステムのセキュリティチェックを実施し、脆弱性が存在しないかを確認することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

これらの対策を講じることで、FortiClient VPNのログ記録問題によるリスクを軽減し、組織全体のセキュリティを強化することができます。しかし、これらの対策には限界があるため、より高度なリモートアクセスソリューションの導入も検討すべきです。

SSWによる安全性とFortinetとの比較

Splashtop Secure Workspace(SSW)は、VPNに依存せずに安全なリモートアクセスを提供する次世代のソリューションです。特に、以下のような利点があります

  1. 詳細なログ管理

    Splashtop Secure Workspaceでは、すべてのアクセスと認証の試行が詳細にログに記録されます。これにより、管理者は不審な活動をリアルタイムで把握し、迅速に対処することが可能です。FortiClient VPNのようにログが記録されないという盲点がないため、セキュリティリスクを大幅に低減します。
  2. 多要素認証(MFA)の標準サポート

    Splashtop Secure Workspaceは、多要素認証(MFA)を標準でサポートしており、認証情報の窃取に対する防御を強化しています。これにより、単一のパスワードに依存することなく、より安全な認証を実現します。
  3. アクセス制御の柔軟性

    Splashtop Secure Workspaceでは、アクセスするユーザー、デバイス、および場所に基づいて詳細なアクセス制御が可能です。これにより、特定の条件を満たさないアクセスを自動的にブロックし、不正アクセスのリスクを最小限に抑えます。
  4. VPNに依存しないアーキテクチャ

    Splashtop Secure Workspaceは、VPNに依存しないため、従来のVPNが抱える速度の低下や脆弱性といった問題を回避できます。これにより、ユーザーはより快適で安全なリモートアクセス体験を享受できます。

Fortinetとの比較

FortinetのVPNソリューションは、一部のセキュリティリスクに対応しきれていないことが明らかになっています。特に、認証ログの記録に関する問題は、攻撃者に対する脆弱性を残す原因となります。一方で、Splashtop Secure Workspaceは、詳細なログ管理、多要素認証、柔軟なアクセス制御などを通じて、より高度なセキュリティを提供します。また、VPNに依存しないSplashtop Secure Workspaceのアーキテクチャは、従来のVPNの持つパフォーマンスやセキュリティ上の問題を解消し、より信頼性の高いリモートアクセス環境を実現しています。そのため、FortiClient VPNサーバのリスクを回避しつつ、セキュリティを強化したいと考える企業にとって、Splashtop Secure Workspaceは最適なソリューションと言えます。これからの企業のセキュリティ体制には、より堅牢で管理しやすいリモートアクセスソリューションが求められています。Splashtop Secure Workspaceを導入することで、FortiClient VPNのような従来型VPNに起因するリスクを効果的に軽減し、セキュリティを強化することが可能です。


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